水処理の知識 KNOWLEDGE

排水処理施設の種類

(排水、汚水をきれいにするための設備にはどんなものがあるのか)

浄化槽

(合併)浄化槽と単独(みなし)浄化槽
(合併)浄化槽は生活排水(し尿と雑排水)を処理するための設備であり、処理水は公共用水へ放流されます。
構造については、国土交通省の定める構造基準に従う他近年では性能評価型浄化槽と言って、メーカーが独自で開発認定を受けた性能の高い浄化槽が数多く開発されています。
その結果、近年コストが安く上がり、性能的にも下水道に匹敵する施設として、その存在価値が高まっています。

一方で、し尿のみを処理するために開発された単独(みなし)浄化槽は、設置された場所の雑排水(風呂水、台所等)を処理することが出来ず、公共用水へ垂れ流してしまうため、現在正規の浄化槽として認められておらず、製造も設置も行う事が出来ません。
下水道に接続されたり(合併)浄化槽に切り替わることで、その数は減り続けてはいるものの、今なお数多く設置されています。
農業集落排水処理施設
農村部の集落に対して集落単位で生活排水を処理する施設であり、管路施設、中継ポンプ場を含みます。
市町村が設置をし、構造的に浄化槽とほぼ同様ですが、(一社)地域環境資源センターによるJARUS型という規格があり、殆どの施設においてこの規格を採用しています。
農業集落排水は、農林水産省の補助金を受けて各市町村が設置し、市町村が管理を行い、住民(使用者)から料金を徴収していますので、下水道に近い性格がありますが、法律上は浄化槽の扱いを受けています。
浄化槽の特徴
地震等で、壊れたとしても復旧までの時間は短時間で済みます。
浄化槽は、使用している場所から処理水を河川等へ排除するため、放流先(河川)に対して自然な負荷となります。
一方で、良い状態を保持するために法律で定められた3つの作業(点検、清掃、法定検査)を行う必要があり、作業を怠って状態が悪化すると、臭気や害虫が発生するというリスクがあります。
浄化槽の費用
浄化槽の設置に際しては、各市町村が補助金を出す場合がありますが、その割合は市町村によりまちまちで、基本的には設置者の敷地に設置者の負担で設置をし、その保守費用(点検、清掃、法定検査)は全て設置者の負担となります。

し尿処理施設

し尿処理施設
市町村が計画する生し尿(汲み取りし尿)及び浄化槽汚泥を処理するための施設で、廃棄物処理法の適用を受けます。
地域し尿処理施設(コミニュティープラント)
市町村が計画する生活排水を処理するための施設であり、分類としてはし尿処理施設に含まれますが、構造的には、浄化槽とほぼ同じです。

下水道

公共下水道
地方公共団体が管理する下水道で、終末処理場を有するもの又は流域下水道に接続するものであり、かつ、汚水を接続すべき排水施設の相当部分が暗渠である構造のものを言います。
流域下水道
専ら地方公共団体が管理する下水道により排除される下水を受けて、これを排除し、及び処理するために地方公共団体が管理する下水道で、2以上の市町村の区域における下水を接続するものであり、かつ、終末処理場を有するもの又は公共下水道により排除される雨水のみを受けて、これを当該雨水の流量を調節するための施設を有するものです。
都市下水路
主として公共下水道の排水区域外において、専ら雨水排除を目的とするもので、終末処理場を有しないものです。

(以上、国土交通省HP 下水道の種類 より抜粋)

除外設備
事業者が事業場(工場等)から下水道へ下水を流すときに悪質な下水(濃度、成分)を流すと、終末処理場の処理に支障を来すことになります。このため、下水道管理者は事業者に対し、悪質下水を一定の水質以下にまで処理するための設備を設置させることが出来ますが、この設備を除外設備といいます。

(原文のまま)

下水道の特徴
浄化槽の処理対象の殆どが生活排水であるのに対し、下水道は一般家庭の生活排水、工場廃水(一部処理されたもの)、店舗排水等全てを受け入れ処理しています。
下水道には分流式と合流式があり、合流式は雨と汚水を一緒に下水管路に流すため、雨の時には、未処理の汚水が河川等へ直接放流されることもあります。
また、大雨で排水が追いつかないと、マンホールから汚水が逆流し、町中水浸しになることもあります。
下水道は下水管路と終末処理場がセットになっており、近年発生したような大地震が起きると、下水管路がズタズタに破壊されるため、復旧までに長期間かかり、その間、使用者がトイレを使用できない等の不便が生じます。
また、生活排水や工場廃水を大量に集めて、下流域でまとめて放流するため、放流先の河川等は、下水道の放流水の影響を大きく受けることになります。
一方で、家庭排水を下水道に流してしまえば、使用者は流した後のことを気にすることなく生活が出来ます。
下水道の費用
各家庭が下水道の地域になった時には、敷地面積に応じて負担金を払わなければなりませんが、下水道(管路)の敷設にかかる金額と比較すれば、少ない金額であるのは想像に難くありません。
また、下水道料金は、水道料金と一緒に徴収されますが、下水道の維持管理にかかる費用を徴収したお金だけで賄うことは出来ず、一般会計からの予算で補填して運営しているのが実情です。
このように下水道は建設時にも、維持管理にも多くの税金が投入されているのが判ります。
近年設備の老朽化が進み人口減少も加わって、水道料金を値上げする自治体が増えています。
下水道もゆくゆくは同じ運命をたどるのではないかと危惧する次第です。

産廃処理施設

産業廃棄物処理施設
事業者が事業場(工場等)から直接公共用水に排水をする場合、水質汚濁防止法の排水基準を遵守するために設置する施設です。工場排水の種類により、設備の内容は大きく異なり、構造についても特に定めはありません。
※ 上記に分類されないものがいくつかありますが、全体に占める割合が非常に低いため、省略します。
※ なかなか分かりにくいのでまとめてみましょう。
A:し尿の行き先

@下水道
A合併浄化槽
B単独浄化槽
C農業集落排水処理施設
Dコミュニティプラント
Eし尿処理施設(くみ取りし尿)

処理後、公共用水へ放流
B:雑排水(生活排水)の行き先

@下水道
A合併浄化槽
B農業集落排水処理施設
Cコミュニティプラント
D公共用水へ垂れ流し

@からCまでは処理後、
公共用水へ放流
C:産業(工場)排水の行き先

@下水道
A除外設備
B産業廃水処理施設
C公共用水へ垂れ流し

@とBは処理後、公共用水へ放流
Aは処理後、@下水道へ

公共用水に流れ込む水の内訳

公共用水(河川や湖沼)に流れ込む水にどんなものがあるのかを考えてみましょう。

水の種類 汚れ具合(BOD濃度)
(1)雨水
(2)地下水の湧き水や伏流水
(3)下水路を通った雨水
0mg/Lから5mg/L程度 棲息可
(4)下水道の処理水
(5)浄化槽やコミュニティプラント等の処理水
(6)産業廃水処理施設の処理水
5mg/Lから30mg/L程度 汚れに強い魚は可
(7)垂れ流された未処理の生活雑排水や工場廃水 100mg/Lから500mg/L程度 棲息不可
※ 上記表のBOD濃度に関しては、具体的な資料の裏付けはありません。特に排水処理施設の性能は千差万別であり、運転状況により処理水の濃度は良い方にも悪い方にも大きく変わってくるものです。(7)についても、瞬間的に非常に大きな値が出る時もあるでしょうし、その逆もあると思われます。従って、この数字は大雑把なつかみの数字として捉えて頂きたいと思います。

(1)から(7)までの種類の水が殆どの割合を占めると思いますが、これらの流入割合は河川の上流なのか下流なのか、人口密集地なのか過疎地なのかにより著しく変わってきます。